卒業を間近に控えた高校生が主役で、青春小説の趣ですが、近親相姦というタブーを扱っているゆえに暗いトーンの作品です。いくつかの謎は未解決のまま、ラストを迎えます。メフィスト賞恐るべし。
【本の感想】浦賀和宏『地球平面委員会 』
浦賀和宏『地球平面委員会』は、謎のサークルに勧誘された男子大学生が次々と不可解な事件に巻き込まれていくという物語です。
新入学生のサークル勧誘で、”僕”は地球平面委員会なるものに興味を持ちました。屋上からビラをばらまいていた女子学生に惹かれたのです。
”僕”は友人の笠木とともに、地球平面委員会へ顔を出します。
地球平面委員会は、女子学生 宮里真希の他、団田正樹、福島古太の三名と、ネットを通じた百名のメンバーが活動しているのだと言います。彼らは地球が平面であるということを真面目に信じているのでした・・・
本作品は、コメディタッチの青春ものなのかと思いきや全く違います。
校長室の金庫が破られた事件、町で発生した放火事件、そしてこれらの地球平面委員会の関与を疑った笠木の殺害事件によって、”僕”は抜き差しならない状況になります。地球平面委員会は、どういうわけか”僕”の入会を執拗に求めます。
不可解な事件は、これで終わりではありません。町を何者かが氷づけにしてしまったのです・・・
”僕”こと名探偵エラリー・クインの孫、クイーン・大三郎が事件解決に乗り出すのですが・・・大三郎は祖父ゆずりの探偵の才は持ち合わせていないという設定。真希らに翻弄されたあげく、見いだした真実とは何か。地球平面委員会の正体が本作品のキモといってよいでしょう。
続発する事件の契機が、大三郎の存在そのものに関わっているのですが、真相が判明するに至って、おおっ!となるのか、何じゃこれ!となるのか分かれるのかもしれません。エラリー・クインを持ち出したところは、ニヤリとしてしまうのですが、ラストはそうきたかー、ふぅ、というのが本音です。
正直、消化不良気味・・・
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