【本の感想】向後千春 、 冨永敦子『統計学がわかる 【回帰分析・因子分析編】 ファーストブック』 

向後千春 、 冨永敦子『統計学がわかる 【回帰分析・因子分析編】 ファーストブック』 

イアン・エアーズ『その数学が戦略を決める』を読了後、回帰分析の手法を解説したテキストを探してみました。(クリックいただけると感想のページに移動します

文系の自分では、統計学の専門書はハードルが高いのですが(統計、微分積分は高校生の頃からの憎き教科)、向後 千春 、 冨永 敦子『統計学がわかる 【回帰分析・因子分析編】 ファーストブック』は、数学が苦手な読者にも理解しやすい構成です。

本書は、21センチュリーアイスクリームのアルバイト店員アイちゃんが、新米店長のお願い事を受けて、ウエハラ先輩の力を借りながら統計学的な分析手法を駆使するという体裁をとっています。

例えば、「他のチェーン店の最高気温と客数のデータから、新規オープンの店の客数を予測する」という店長からのお題を受けて、アイちゃんが、散布図を作って回帰直線を引いたり、相関の強さを数値化するために相関係数を求めたりします。

店長の要求が高度になるにつれて、アイちゃんを通して様々な分析手法が学べることになるのです。ストーリーを追っているだけで、さくさく理解が進んでいくでしょう。著者の略歴を見るとインストラクショナルデザインを専門としているようだです。なるほど、納得。

自分が本書を気に入っているのは、数式についての解説を一切していないところです。「これを求める場合は、この数式をつかいます」だけを述べており、余計(?)な記述を省いています。数式の意味を知りたいのではなくて、分析手法を知りたいのだから、これはありがたいですね。EXCELを使って、具体的にデータを整理していく方法もためになります。面倒くさい計算は、ツールにやってもらえればいいのですから。

本書は、回帰分析の他、「作為抽出」「重回帰」「偏回帰」「多変量データ」「因子分析」等、盛りだくさんの内容です。さすがに因子分析からは、EXCELでの説明は苦しくなるのですが、そういうものだと割り切ってしまえば、理解は難しくないと思います。