【本の感想】藤井孝一『週末起業』
藤井孝一『週末起業』は、会社を辞めずに起業するをテーマに、ひとつのワークスタイルを提示するものです。
凡そふた昔前の新書なので、旬の情報かというと隔世の感は否めません。古びたのではなくて、週末起業というワークスタイルが一般的になったということです。アフィリエイト、ドロップシッピング、ネットショップ、フリマアプリなどネットを使ったビジネスが、お手軽にできる環境が整っています。今では、(大きな利益を生むかは別として)何らかのかたちで実践している人は、多いでしょう。
日本経済の先行きが不透明感を増すばかりなので、本業以外に収入を求めることを、企業側も積極的に認めるようになっています(老後の事は自分で何とかせよとも受け取れるけれど)。だから、本書が掲げている課題、”会社にバレたらどうする”については、それほど対策に神経を使わなくともよい時代にはなってきていますね。
著者のいう大きな金をかけず、トライアンドエラーでビジネスを育てていくという方向性は、ごもっともです。税対策とか法人化についての知識は、追々、覚えていけばよいというのも納得ができます。まずは、始めてみるということが、一番重要なのです。
読者は、本書に何を期待するでしょうか。
やはり”何をするべきか”を知りたいはずです。それに対する解は、”自分の熱中できること”をビジネスにするべしということです。例として、本書では、鉄道模型が趣味でネットショップを開業した人や、夜景が大好きで夜景コンサルタントになった人の取り組みが、(あっさりと)紹介されています。”自分の熱中できること”なので、時間を忘れてビジネスに集中できると著者は言います。副業は、自分の時間を売っていることになりますが、週末起業は、それとは違い一国一城の主として好きなことができると主張するのです。週末起業は、社畜的生き方と決別するための、ステップアップなんですね。
しかしながら、週末起業は、週末だけ働けば良いわけではありません。24時間、寸暇を惜しむような状態になるかもしれません。結果として、仕事の息抜きの”自分の趣味として熱中できること”が、”自分の最もやりたくない事”になりかねないのではないでしょうか。まずは、好きなことから始めたとして、徐々に、ビジネスとしてのマインドに切り替えていく必要があるのです。
自分が目を引いたのは、子供たちに手伝いをさせて起業家精神を育むという記述です。著者は、ネットショップを開業したなら、梱包をお手伝いさせて小遣いを上げるという提案をしています。なるほど、小中学生からビジネスを理解していくというのは、世界に打って出なければならないこれからの人には重要でしょうね。
自分は、Webサイトを作るお手伝いなど、しています。でも、趣味の延長と言うとそうじゃないんですよね。週末になっても、本職の仕事んじゃん!