【本の感想】筒井康隆『エロチック街道』

本の感想 筒井康隆『エロチック街道』

高校生の頃に夢中になった筒井康隆作品ですが、今となっては読んだのやら読んでいないのやら、分からないものが多くあります。なにせ作品の数が、膨大ですからね。

筒井康隆『エロチック街道』(1981年)は、まさにそんな短編集の一つなのです。

読み終えても、全く記憶を呼び起こすことがなかったので、おそらく初読だったのでしょう。著者ならではの実験的な作品を読むことはできますが、毒性は極めて少ない短編集です。

本短編集のベスト3は、以下の通りです。

■時代小説
歴史小説のパロディーです。筋はメチャクチャ、言葉使いもインチキなのだけれど、それっぽさが堂に入っているので、読んでいてニヤニヤ笑いが止まりません。

■ジャズ大名
日本に漂着した黒人のジャズメン。彼らの演奏にすっかり感化されたお殿様は、城をあげて大盛り上りです。映画化もされた、とってもハッピーな作品です。

■エロチック街道
見知らぬ土地に迷い込んだ男が体験する不可思議な世界。自分は、この手の幻想ともつかない作品が好物です。何がエロチックなのかは、判然としないところはあるのですがね。

その他の作品を、ざっくりと紹介します。

軍人の内面をあからさまに揶揄した「中隊長」、時制の混乱をユーモラスな語り口で描く「昔はよかったなあ」、異星人の地球語教室でおこなわれるレッスン「日本地球ことばを教える学部」、噛み合わない話しの応酬が笑いを誘う「インタビューイ」「一について」「われらの地図」も同様)、

睡眠に至るまでをこれでもかと綿密に描写する「寝る方法」「歩くとき」も同様)、懐かしさの中に一抹の寂しさを感じる「かくれんぼをした夜」、現実の崩壊感が印象深い「偏在」

筒井康隆流の言葉遊び「早口ことば」「また何かそして別の聴くもの」も同様)、リズミカルなショート・ショート「冷水シャワーを浴びる方法」、日常に幻想を持ち込んで不可思議な世界観をみせる「遠い座敷」「傾斜」も同様)。

ざっくりし過ぎか・・・

1986年公開 古谷一行、財津一郎 出演 映画『ジャズ大名』はこちら。

1986年公開 古谷一行、財津一郎 出演 映画『ジャズ大名』
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