【本の感想】ジャック・ヒギンズ『狐たちの夜』

本の感想 ジャック・ヒギンズ『狐たちの夜』(原著)
「狐たちの夜」(原著)

1988年 週刊文春ミステリーベスト10 海外部門 第10位。 

ジャック・ヒギンズ(Jack Higgins)『狐たちの夜』(Night of the Fox)は、Dデイ前夜を背景にした謀略小説です。(ちなみに、Dデイは、ナチス・ドイツ占領下のヨーロッパに連合国軍が侵攻を開始した1944年6月6日ね!)

元イギリス特殊作戦執行部員セアラ・ドレイトンの回想として、物語は始まります。

舞台は、ジャージー牛で有名な、ジャージイ島。1944年4月、ドイツのEボートの攻撃を受け、演習中のアメリカ軍の揚陸船が沈没しました。イギリス特殊作戦執行部は、ヒュー・ケルソゥ大佐が、ドイツの占領下にあるジャージイ島に流れ着いていることを知り、衝撃を受けます。ケルソゥは、Dデイの極秘情報を知る人物なのです。

ハリー・マーティノゥは、イギリス特殊作戦執行部の指令により、ナチスの将校に偽装して、負傷して身動きが取れないケルソゥを救出べくジャージイ島へ向かいます。マーティノゥの相棒は、フランス人娼婦を偽装したセアラ。

一方、ドイツでは、ヒトラー暗殺計画を実現するため、エルヴィン・ロンメル将軍が暗躍していました。ロンメルの偽物、役者のバウムをジャージイ島へ向かわせ、ヒトラーとその腹心たちの目を引きつけておこうというのです ・・・

本作品は、ロンメルがヒトラー暗殺計画に関与していたという設定です。単なる救出劇に終わっていないのは、上手くこの暗殺計画を絡めているからなのです。ロンメルのジャージイ計画が、マーティノゥの作戦行動に、どう影響を与えていくかが見所となっています。

ケルソゥ脱出が不可能ならば、命を奪うことも是とする非情なマーティノゥ。マーティノゥとチャーミングなセアラが、徐々に心を通わせていくのは、かの国のエスピオナージでは、お約束事。しかし、このあるあるが、緊迫した状況下にあっては、なかなか心地良いですね。(女性同伴で救出に向かうというのは、説得力にいまいち欠けるのですが)

秘密野戦警察官ミュラー大尉の身辺調査により、窮地に陥るマーティノゥ。脱出行を目前にして、セアラがミュラーにより囚われの身となってしまいます。

マーティノゥはどうする。果たして、脱出は成功するのか。

ストーリーは、アクション炸裂のクライマックスへなだれ込みます。ピンチはあるものの、手に汗握るところまではいきません。なにせ、回想録なので、最後に無事なのは承知しているのですから。本作品は、狐たちの化かし合いを楽しむべきなのでしょう。マーティノゥとセアラのその後は、ほろ苦さがしみますね。

なお、本作品はTV映画化されています。ハリウッドでリメイクしてくれないかなぁ。

1990年 制作 ジョージ・ペパード、デボラ・ラフィン 出演『Night of The Fox』

1990年 制作 ジョージ・ペパード、デボラ・ラフィン 出演『Night of The Fox』はこちら。

(注)読了したのはHayakawa Novelsの翻訳版『狐たちの夜』で、 書影は原著のものを載せています 。