パラレルワールドに宇宙冒険風味を加え、著者ならではのヒネリを効かせた作品です。有人宇宙飛行がまだまだ先の1949年に刊行されたというのだから驚き!パラレルワールド好きには必読の書と言えるでしょう。
【本の感想】フレドリック・ブラウン『火星人ゴーホーム』
突然、地球へ姿をあらわした数十億の火星人。緑色をした珍妙な小人たちは、ひたすら地球人へのいやがらせを繰り返します。火星人の口から、暗黙の事柄が全て公にされ、地球人の生活は混乱に極みに達し、やがて経済は破綻し始めるのでした ・・・
フレドリック・ブラウン(Fredric Brown)『火星人ゴーホーム』(Martians、 Go Home)(1955年)は、飛来した異星人による地球侵略ものではあります。
ただ、本作品のヤツらは、目的を明かさぬまま、ただただ、マンツーマンで人々にまとわりつき、嫌がらせをするという口撃法(?)で、悩ませるのみです。
これによって、個人のプライベートは崩壊し、マスコミは沈黙させられ、国家間の機密事項も全て白日のもとに晒されます。企業活動が停止したため人々は職を失い、かつてない不況が世界を襲い始めるのです。
本作品では、ドミノ倒しのように崩壊の道をすすんでいく世界の姿がユーモアたっぷりに描かれています。
公にされないという事が、世の中の様々な物事のバランスを取っている、という著者の主張なのでしょう。もしも、こんな状況になったら人類は、そして世界は・・・が、語られていきます。
本作品の主人公SF作家ルークは、精神的なショックのため、火星人の姿が見えず、声も聞こえなくなります。火星人に煩わされない世界で唯一幸福を手に入れた彼が、精神疾患の患者となってしまうという逆説が面白いですね。
肉体的な攻撃を一切受け付けない火星人。果たして、地球人に打つ手はあるのでしようか。
・・・オチは、そこにいくまでのドタバタが愉快な分、あっさり目なんですよね。
本作品が原作の、1989年公開 ランディ・クエイド、マーガレット・コリン 出演 映画『火星人ゴーホーム!』はこちら。
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