【本の感想】高嶋哲夫『イントゥルーダー』

高嶋哲夫『イントゥルーダー』

1999年 第16回 サントリーミステリー大賞・読者賞受賞作。

高嶋哲夫『イントゥルーダー』は、1999年の作品なのだけれど、近年の旬なテーマを扱っています。

コンピュータ業界に名を馳せる東洋電子副社長 羽嶋浩司へ、昔の恋人 奈津子からかかってきた電話。それは、羽嶋の息子慎司が、交通事故により意識不明の重篤な状態に陥っているというものでした。奈津子は、25年前、羽嶋の前から忽然と姿を消し、ひとりで慎司を産み、育てていたのです。

息子の存在すら知らない羽嶋は、戸惑いながらも病床の慎司の元へ向かいます。

父を目指し、優秀なコンピュータ技術者となった慎司。しかし、慎司の体内からは、覚せい剤が検出されていました。警察は、慎司を覚せい剤の売人とみて、羽嶋を激しく追及します ・・・

つかみはオッケー。ぐぐっと話の流れに引き込まれていきます。

やがて、慎司は、羽嶋と一言も言葉を交わさないまま、この世を去ってしまいます。慎司の死に衝撃を受けた羽嶋は、息子の汚名を晴らそうと、慎司の恋人理英子とともに、調査を開始します。

徐々に明らかになっていく慎司の過去。そして、羽嶋が事故の真相に隠された大いなる陰謀に辿りついたとき、羽嶋の命もまた脅かされるのでした ・・・

この陰謀というのが、原発建設に関するもので、昨今沸騰した話題の核心をついています。著者の元日本原子力研究所研究員という経歴を知ると、まるで発表当時から未来を予見したかのような錯覚を覚えるでしょう。

本作品は、リアルさを伴ったスリリングな展開にくわえ、サプライズが用意されており読み応えがたっぷりです。(ただし、サプライズの方は、予想がつきやすいので、ああやっぱり、となるかもしれません)

自分はミステリーというよりも、人間ドラマとして興味を惹かれました。羽嶋や、妻裕子、娘明美ら登場人物の複雑な心境を巧み描写されています。羽嶋が、徐々に慎司への愛情を抱いていく様は、全く違和感を感じさせません。ここは特にお上手です(失敗するとストーリーが破綻してしまいますから)。本作品は、冷徹と評されている羽嶋の再生の物語でもあるのですね。ただし、結末については、好き嫌いが分かれそうです。

なお、本作品は、『イントゥルーダー 見知らぬ息子は犯罪者 25年目の父子愛』としてテレビドラマ化されているようです。サブタイトルは、ストーリーそのまんまだよなぁ。