【本の感想】逢坂剛『斜影はるかな国』

本の感想 逢坂剛『斜影はるかな国』

1991年 週刊文春ミステリーベスト10 国内部門 第6位。
1992年 このミステリーがすごい! 国内編 第7位。

通信社記者 龍門二郎は、スペイン内乱の義勇兵にギジェルモ・サトウなる日本人がいたことを知り、取材のため現地へとびます。その時、スペインでは、テロリストを暗殺する非合法組織GALによる事件が勃発していました。スペインの暗部へと踏み込んでいく龍門。ギジェルモの足跡を追ううちに、龍門は、自身の出自がギジェルモとつながっていることに気づき始めます・・・

逢坂剛『斜影はるかな国』は、初めてものした新聞連載小説とのことで、量、質ともにボリューム満点の大作です。

1936年スペイン内戦と、現在が錯綜しながら物語が進みます。謎の殺し屋、隠された財宝、洞窟内での死闘という冒険小説の趣もあり、頁数は多いのですが、飽きずにラストまで読ませてくれるでしょう。龍門の苦い恋愛も絡んで、見所てんこ盛りです(もっとも、これはなくとも良いとは思うのですが)。

ギジェルモの過去を追って、東奔西走の龍門。はてさて、龍門はギジェルモの行く末を突き止めることはできるのでしょうか。ラストは、あっと驚く真相が待っています。

スペイン内戦や、本作品の発表当時のスペインの国情に通じているのなら、より楽しめる作品です。自分のように知識に乏しいと、著者のアツい思いが伝わっていないような、もどかしさがありますね。

ちなみに、本作品には、著者のシリーズキャラクターである岡坂神策がほんのチョイ役で登場します。自分は、このシリーズを一作品も読んでいないので、これがまたイタイところでした。

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