【本の感想】津村巧『DOOMSDAY-審判の日-』

津村巧『DOOMSDAY-審判の日-』

2001年 第22回 メフィスト賞受賞作。

津村巧『DOOMSDAY-審判の日-』は、突然飛来した宇宙人に、地球人が蹂躙されるというお話です。

人口7千人の町、米国北西部フラートン郡フラートン町。ここに突然、現れた、六本の手を持つ二体の異星人が、住民たちの殺戮を開始します。

米軍の攻撃を物ともしない高さ約1,600メートル、直径約24キロのバリアに閉ざされ、住民たちは逃げ惑い、あるいは反撃を試みますが犠牲者は増えるばかり。全米中が見守る中、異星人によって人も建物も破壊の限りを尽くされるのでした・・・

異星人の襲来は、フラートン郡に移送されてきた元囚人 コウイチ=ハヤシを巡って、住民たちの反対運動が勃発している最中の出来事です。このゴタゴタを通して、本作品に数多くの登場する人物の性格が明らかになっていきます。

俗物っぷり甚だしい人々が右往左往するのですが、どうにも本筋と上手くリンクしていないようです。次々に斃れていく者たちには、感情移入ができない分、悲惨さも感じなければ、破滅的な可笑しさも伝わりません。登場したまんま、何の捻りもなく殺されていくだけなのです。

少しばかりのドラマはあるものの、想定の範囲内に収まってしまっていますね。そもそも、異星人が何をしているのかというのが、想像がつきます。

そう、あの映画のまんまなのです。

ここは、あっと驚かせて欲しかったのですが、あまりにもストレートすぎて、がっかりを通り越し苦笑いが出てしまいました。

著者の米軍兵器に関する知識は相当のものだと思うし、文章もすっきりしていて読み易くはあります。しかし、そこそこの頁数を費やして、在り来たりの結末にしてしまったのはとても残念です。

最初から、パロディーだぞ、という潔さがあったほうが、良かったかもしれないなぁ。