【本の感想】乾くるみ『Jの神話』

乾くるみ『Jの神話』

1998年 第4回 メフィスト賞受賞作。

乾くるみ『Jの神話』は、何とも後味の悪い作品です。

全寮制の名門女子高「純和女子学院」へ入学した坂本優子。優子は、生徒会長 朝倉麻理亜の圧倒的なカリスマ性で、生徒たちの統制が図られていることに気づきます。

ところが、麻理亜が原因不明の死を遂げてから、学内の様相は一変してしまいます。優子の親友 高橋椎奈を推す一派と、亡き麻理亜の意思を継ぐ一派とで軋轢を生むようになったのです。

一方、麻理亜の死に不審を抱いた父 朝倉剛蔵は、鈴堂美音子こと名探偵<<黒猫>>に真相を探ることを依頼します。麻理亜は妊娠し、胎児が取り出されて死んでいたというのです。そしてそれは、前年 謎の死を遂げた麻理亜の姉 百合亜の状態と酷似していました。

<<黒猫>>は、手掛かりを求めて「純和女子学院」へ向います・・・

本作品は、女子高で起きたいくつかの死亡事件が、人類創世まで遡ってしまうという大風呂敷を広げます。

「ジャック」というキーワードを探るうちに、すべて事件の因果関係が明らかになっていくのですが、何とグロテスクなことでしょう。全寮制女子高にステレオタイプの妄想をぶち込んだ感があり、ちょいと不快な気分にさせられます。

科学的にどうかは分かりませんが、風呂敷の広げ方といい、畳み方といい発想の面白味はあります。しかし、気色悪さを引きずってしまいますね。「Jの神話」とは言い得て妙ではありますか。

一番納得がいかないのは、<<黒猫>>がさしたる名探偵ではないことですね。これはっ!という推理の冴えが全く見られません。結末は、おやおやとなるんですけどね。