【本の感想】コニー・ウィリス『リメイク』

コニー・ウィリス『リメイク』

1996年 ローカス賞受賞作(中長編部門)。

コニー・ウィリス(Connie Willis)『リメイク』(Remake)は、新作映画を制作しなくなった21世紀のハリウッドが舞台です。ここでは、過去の作品にデジタル化を施した俳優を貼り付ける、リメイクばかりがなされていました。映画会社から貼り込み作業を請け負う大学生のトムは、パーティーで、フレッド・アステアに憧れる美しい女学生アリスと出会います。アリスは、映画で踊ることを夢見ているのですが、実物の俳優を使わなくなった映画産業では実現が不可能です・・・

近未来とはいえ2005年が舞台なので、パラレルワールドということになるでしょうか。現在でもリメイクが盛んに行われている映画産業ですが、本作品のようなマリリン・モンロー主演の『プリティー・ウーマン』や、シルベスター・スタローン主演の『ベン・ハー』ができるところまで技術が追いついてません(あと一歩でしょうか)。技術以外に色々と難しい問題はあるとしても、こういうリメイクのアイディアは楽しいなぁ、と思います。

アリスの夢を無駄と決めつけたトムは、彼女と喧嘩別れをしてしまいます。ところが、トムは貼り込み作業の途中、1950年代のミュージカル作品の中で踊るアリスを見つけて・・・と、物語は展開します。

どうやって過去の映像に入り込んだのかを探り始めるトム。ありがちなタイムトラベルものか、と思いきや、さにあらず。いやいや、それは 無理でしょうとなりながらも、ロマンチックであるがゆえに許せてしまいます。ここが見所ということになりますか。

ドラックでラリったトムが、ミュージカルに見入るアリスに魅かれる瞬間等々、随所に散りばめられた映画的な表現がステキです。訳者あとがきの ボーイ・ミーツ・ガールの物語、というのが実にしっくりきます。

引用されている、セリフや映画(200本以上ある)は、巻末の訳注や映画題名一覧がないとなかなか辛いですね。自分は、映画をそこそこ見る方ですが、小ネタが「細かすぎて伝わらない」のです。知っているセリフは、その使われ方にニンマリできるので、本書を読んで映画ツウ度を確認するのも面白いでしょう。

それにしても、著者はリバー・フェニックスをいたくお気に入りのようですね。