【本の感想】スティーヴン・ジョーンズ 編『フランケンシュタイン伝説-海外ホラーSF短編集』

スティーヴン・ジョーンズ 編『フランケンシュタイン伝説-海外ホラーSF短編集』

スティーヴン・ジョーンズ(Stephen Jones 編『フランケンシュタイン伝説-海外ホラーSF短編集』( The Mammoth Book of Frankenstein )は、フランケンシュタインがテーマのホラーアンソロジーです。

全12編が収録されています。メアリー・シェリーの元祖『フランケン・シュタイン』の後日譚が2編、その他は、多少アレンジしているものの、人体改造系のものが多いですね。死体を継ぎ接ぎしてヒトをつくるという類のお話です。

吸血鬼ものや、人狼もの、幽霊譚と違って、短編ではバリエーションをつくりにくいのかもしれません。そもそも、フランケンシュタインが、ロマンチックとは程遠い存在であるし、じわじわと読者を恐怖に陥れるのとも違います。海外ホラーSF短編集という副題ですが、怖くないホラーの典型になってしまっています。

とはいえ、”モンスターとして生まれた苦悩”みたいなステレオタイプな作品はないので、読んでいて飽きはしなと思います。

自分が愉しめた作品を2編紹介しましょう。

■「完成した女」ロべルタ・ラネス
78歳の著名な作家アリソンは、病魔に侵され余命は後、いくばくか。ある日、ケネス医師から、脳を別の体に移植することを勧められます ・・・


献体が届くたびに全身が形づくられていくという人体改造系のストーリー。最後に目を移植されたアリソンが見たものは!、というのが見所です。

■「理性の眠り」ダニエル・フォックス
遺伝子レベルまでプログラムされ、全てにおいて完璧なナサニエル。彼が最後に学んだものとは何か ・・・

本作品は、直球のフランケンシュタインものとは毛色が違っていますが、味わい深さという点でベストです。

アンソロジーには、発見の楽しみがあるのですが、残念ながら、これは!という作品はありませんでした。いちばん良いのはカバーイラストですね。出版社が、あの「一太郎」のジャストシステムというのがレア度は高いかもしれません。

キャリアはあるものの日本ではなじみの薄い作家陣。自分が知ってるのはグレアム・マスタートンとピーター・トレメイン、 ポール・J・マッコリー ぐらいでしょうか。

その他は、R・チェットウィンド・ヘイズ/マンリー・ウェイド・ウェルマン/リサ・モートン/バジル・コパー/エイドリアン・コール/カール・エドワード・ワグナー/ブライアン・ムーニー

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