グリム童話ルンペルシュティルツヘンをモチーフにしたダークファンタジーです。ハッピーエンドに一撃をくらわす最後の一文が秀逸です。
【本の感想】ジョナサン・キャロル『月の骨』
ジョナサン・キャロル(Jonathan Carroll)『月の骨』(Bones of the Moon)(1987年)は、<<月の骨>>シリーズの第一作となるダーク・ファンタジーです(シリーズ化は後付けっぽいのですが)。
冒頭から家族をまさかりで斬殺した<まさかり少年>アルヴィン・ウィリアムズが登場し、不穏な空気が漂いますが、それ以降暫くは夢か現かの世界みることになります。
美しいカレン・ジェイムスは、ボーイフレンドとの間にできた子を堕胎してしまいました。 バスケットボール選手として活躍していた心優しき友人ダニーは、引退を契機にカレンとの結婚を決意します。
夫婦となり、幸福な日々を過ごすカレンとダニー。ゲイのエリオットといった親友もでき、そして、カレンはダニーとの間に新しい命を宿します。
カレンは、その頃から夢の中で、ロンデュアという異世界を息子ペプシと旅することになります。お供は黒帽子の犬ミスター・トレイシー、狼フェリーナ、駱駝マーシオ。旅の目的は、”月の骨”を5つ集め支配者ジャック・チリに対抗すること。実は、ペプシは、生まれることがなかったカレンの子供だったのです。
一方、現実世界でカレンは、メイと名付けた女の子に恵まれます。エリオットを通して知り合った映画監督ウェーバー・グレストンの傍若無人の振舞いに、異世界の力を発揮してしまったカレン。ウェーバーは、その時からカレンを求めるようになり、夢の中ではロンデュアを彷徨い始めます。
これが、ざっくりとしたお話の流れです。
カレンが逮捕監禁されている<まさかり少年>アルヴィンから慕われたり、ウェーバーの熱愛に心動かれそうになるなどの現実世界と、それと並行して異世界の旅の出来事がつづられます。ファンタジーにしては、この異世界のイメージはイマイチです(面白いかどうかは別としてクライヴ・バーカーのダーク・ファンタジー『イマジカ』を見よ!)。くわえて、カレンの連続夢でありながらシーンが断片的で、消化不良をおこしてしまいました。
本作品のダークな部分は、ラストに近いシーンに集約されてしまっています。リアルはもっと残酷、が表現したかったことでしょうか。衝撃的ではあるのですよ。でも、うまくまとまっていません。『死者の書』と比べてしまうと、どうもねぇ・・・
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