【本の感想】仁賀克雄 編『新・幻想と怪奇』

本の感想 仁賀克雄 編『新・幻想と怪奇』

仁賀克雄 編・翻訳『新・幻想と怪奇』は、ハヤカワNV文庫『幻想と怪奇』全三巻の続篇にあたります。

ハヤカワNV文庫『幻想と怪奇』は、クラシックなホラーアンソロジーだったのですが、スプラッタホラーに凝っていた当時の自分にとっては地味な作品が多かったように記憶しています。切株系に食傷してしまった昨今は、どうやら、しっとりじわじわした幻想譚へ好みが移ってきているようです。

『新・幻想と怪奇』は前作と同様、恐怖を煽り立てるような派手な作品は皆無ですが、自分の趣味趣向の変化に伴ってツボにはまった感があります。

収録されている16人の作家陣による17作品(ローズマリー・ティンパリーのみ2編)は、ショートショートに近い短編です。日本国内ではあまり名前を聞かない作家の作品も収録されていますが、これは編者の知見の広さを物語るものでしょう。アンソロジーは当たり外れの振れは幅が大きいのですが、本アンソロジーは、ホラー、ミステリ、SF、奇妙な味までとバリエーションが広く十分に楽しめると思います。

「マーサの夕食」、「ジェリー・マロイの供述」、「奇妙なテナント」、「射手座」、「レイチェルとサイモン」がベスト5です。以下、簡単なあらすじを紹介してみましょう。

■マーサの夕食(ローズマリー・ティンパリー)
料理上手で理想的な妻を持つ男。愛人との逢瀬を楽しむ彼が、貞淑な妻から受けたしっぺ返しとは。

■闇が遊びにやってきた(ゼナ・ヘンダースン)
魔法の石で闇を閉じ込めている5歳の少年の物語。

■思考の匂い(ロバート・シェクリィ)
未知の惑星に不時着した男を待っていたのは、思考を感じ取って襲いくる獣でした!救助を待つ間、彼は逃げとおすことができるでしょうか。

■不眠の一夜(チャールズ・ボーモント)
怪異現象を議論している席上、唯一無関心であった男が語った不可思議な一夜の出来事とは。

■銅の椀(ジョージ・フィールディング・エリオット)
偉丈夫の捕虜の口を割らせるための拷問器具。それは銅の椀と鼠でした。スティーヴン・キングの作品にこのアイディアをつかったものがあるそうです。

■こまどり(ゴア・ヴィダール)
9歳の少年の、こまどりにまつわる忘れられぬ思い出。

■ジェリー・マロイの供述(アンソニイ・バウチャー)
前途洋々のお笑いコンビ ジェリーとジーン。ジーンの妻ステラがコンビ解消をせまった時 ・・・

■虎の尾(アラン・ナース)
異次元につながっているハンドバックを手に入れた科学者たち。彼らは、ハンドバックからむこうの世界をひっぱり出そうと試みます。

■切り裂きジャックはわたしの父(フィリップ・フォセ・ファーマ)
切り裂きジャックを父にもつ男の告白。

■ひとけのない道路(リチャード・ウィルスン)
家路を急ぐ男が迷い込んだ人々ひとびとが忽然と姿を消した世界。そのわけとは。

■奇妙なテナント(ウィリアム・テン)
テナントを借りに来た二人の男は、そのビルに存在しない13階に事務所をかまえました。念願かなって管理人がその事務所を訪れたとき ・・・

■悪魔を侮るな(マンリー・ウェイド・ウェルマン)
ナチスドイツの軍隊が投宿したルーマニアの古城。そこは、人ならぬものの住み処でした。 F・ポール・ウィルスン『ザ・キープ』の元ネタのようです。納得。

■暗闇のかくれんぼ(A・M・バレイジ)
大きな屋敷でかくれんぼに興じる人々。12人のはずが、13人いる!

■万能人形(リチャード・マシスン)
乱暴ものの幼い息子に手を焼く夫婦は、何でもできる万能人形を買い与えました。落ち着くかにみえた息子でしたが、やがて万能人形も乱暴をはたらくようになり ・・・

■スクリーンの陰に(ロバート・ブロック)
あらゆる映画のエキストラとして出演した老俳優。彼は、映画の中に亡き恋人の姿を発見するようになります。

■射手座(レイ・ラッセル)
19世紀末のフランス。娼婦惨殺事件の犯人は、なんとハイドの息子!

■レイチェルとサイモン(ローズマリー・ティンパリー)
同じフラットの美しい寡婦に恋した男。女性は、存在しない自分の子供への執着に囚われています。男は女性を救うことができるのでしょうか ・・・

ん~ 文庫でもいいかもね。

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