【本の感想】松閣オルタ『オカルト・クロニクル』

松閣オルタ『オカルト・クロニクル』

松閣オルタ『オカルト・クロニクル』は、世の奇々怪々な事件を取り上げ、(参考資料を見てわかるとおり)膨大な資料を参照しつつ、ハテナ?に迫ろうとするものです。

著者は、Webサイト「オカルト・クロニクル」の主筆とのことですが、ネット記事にありがちなググって、ハイ!まとめではなく、事件・事故が発生した現地に赴き、文字どおり足で取材を重ねるという念の入れようです。まさに、好きこそものの上手なれ。

著者は、タイトルから想像するような「こりゃぁ、超常現象ですな!」の紋切り型で終わっていません。 真実を探求しつくしてこそのオカルト。 このオカルト魂に、とても好感がもてるのです。

信奉者はタフなロマンを!信奉者の敵は懐疑論ではなく安易な否定論だ!

自分は、オカルト信奉者ではありませんが(興味はもちろんあります)、この著者のアツさは見習うべきものがありますね。

取り上げられている事件は、国の内外問わず、時代も古くは17世紀魔女裁判「セイラム魔女裁判」まで遡るものもあります。「ディアトロフ峠事件」は、ドニー・アイカ―著『死に山:世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』が出版されました。映画『フィラデルフィア・エクスペリメント』の元ネタの謎解き(?)「科学が襲ってくる」は興味津々です。 「迷宮」を読んで驚いたのは、井の頭バラバラ事件が解決されていないこと。衝撃的な事件であっても、いつの間にか風化して自分の中で解決済にしてしまいました。よくよく事件の全容を読み解いてみると解決に至らないことそのものが魔訶不識です。

著者は、取り上げているそれぞれの事件を、参考資料を引用しつつ詳説し、いくつかの仮説をたてていきます。ありそうな、から、荒唐無稽のものまでを挙げ、その中から限りなく真実に近そうなものを提示します。と、いっても堅苦しくはなく、そもそも著者がネットのひとなので実に軽妙な書きっぶり。文章表現はアレなのですが、そこからチラリと知性のキラメキが垣間見えたりします。

その筋の団体から激しく物言いがつきそうな部分もズバリと記載しており、このギリギリの姿勢は評価したいですね(一方では、アマゾンのコメントを気にするなどチキンな面も)。

本書に取り上げていない事件は、Webでとのこと。たまにのぞいてみるとしますか。

その他、本書で取り上げられている事件は以下の通りです(タイトルのみ記載)。

熊取町七名連続怪死事件/青年は「虹」に何を見たのか/坪野鉱泉肝試し失踪事件/「人間のみ足首」が次々と漂着する/「謎多き未解決事件」/ミイラ漂流船/岐阜県富加町「幽霊団地」/八丈島火葬場七体人骨事件/獣人ヒバゴン/ファティマに降りた聖母/赤城神社「主婦失踪」事件