【本の感想】ジェニファー・ライト『史上最悪の破局を迎えた13の恋の物語』

ジェニファー・ライト『史上最悪の破局を迎えた13の恋の物語』

芸能人カップルの「破局!」報道を目にすると、ついつい、その真相を深堀りしてしてしまいます。他人の不幸は蜜の味。こういう事を看過できない自分のすけべ根性は、治らないだろうなぁ・・・

ジェニファー・ライト(Jennifer Wright)『史上最悪の破局を迎えた13の恋の物語』(It Ended Badly:Therteen Of The Worst Breakups In History)は、帝政ローマ時代から現代(ちょっと昔)まで、セレブな人達の破局の物語です。タイトルの”13の恋”から想像するような麗しさはなく、男と女、はたまた、男と男、イカれた人々のドロドロした痴情のもつれ話しが13連発です。うんうん、すけべ根性が疼きます。

皇帝ネロから始まり、現代まで歴史を遡ってくるのですが、著者がちょいちょい入れてくるアメリカンなジョークのせいか、真偽のほどを疑いたくなってしまいます(かの国ならではの楽屋オチが散見されて戸惑いも)。軽妙さがウリなのは分かるので、信じるか信じないかは・・・的なノリで読み進めるなら十分に楽しめるでしょう。

特に興味を惹かれたのを3つあげるなら、「第一章 関係悪化のあとの果てしない蛮行 ネロとポッパエア」「第九章 ”名乗ることのできない愛の裏切り” オスカー・ワイルドとアルフレッド・ダグラス卿」、「第十一章 別れた恋人の代わりには” オスカー・ココシュカとアルマ・マーラー」です(エリザベス・テイラ―の破天荒っぷりもなかなか)。

「ネロとポッパエア」は、古代ローマの悪夢の演出者 皇帝ネロのとち狂った蛮行の数々と、不倫の恋に情熱を燃やす姿が述べられています。命が空気より軽いが如く、邪魔者をどんどん排除するネロ。やっと手に入れたポッパエアも勢いあまって(?)亡きものにしてしまうのですが、その後のネロの奇矯ぶりはおぞましさ極まれりです。

「オスカー・ワイルドとアルフレッド・ダグラス卿」は、同性愛がご法度だった19世紀、オスカー・ワイルドの悲劇が述べられています。 名誉棄損の裁判をしたら墓穴を掘ってゲイがバレて有罪となり、お相手のアルフレッド・ダグラス卿に知らんぷりをされてしまいます。オスカー・ワイルドは、その後、破産して無為のうち亡くなってしまうんですよね。自分が中学生の頃読んだ「獄中記」は、投獄されたワイルドの手記ですが、このあたりの背景を知らなかったのでチンプンカンプンでした。

「オスカー・ココシュカとアルマ・マーラー」は、芸術家ココシュカが、アルマ(作曲家のグスタフ・マーラーの寡婦ね)に魅入られ、破局後、奇矯な行いをする姿が述べらえています。アルマに似せた人形を連れて歩き、パーティで紹介するようになったというのです。人形との性的関係も匂わせます。それでも、ウィーンのドレスデン美術大学の教授であったというのですから、かの国は懐が広いですね。本書での大きな発見はこのココシュカ。彼の絵画を含めて掘り下げてみたい(けったいな)人物です。

その他の登場人物は次の通りです。

アリエノール・ダキテーヌとヘンリー二世/ルクレツィア・ボルジアとジョヴァンニ・スフオルツァ/ヘンリー八世とアン・ブーリンとキャサリン・ハワード/アンナ・イヴァノヴナ/ティモシー・デクスター/キャロライン・ラムとバイロン卿/ジョン・ラスキンとエフィー・グレイ/イーディス・ウォートンとモートン・フラートン/ノーマン・メイラーとアデル・モラールズ・メイラー/デビー・レイノルズとエディー・フィッシャーとエルザべス・テイラー