【本の感想】ニコラウス・ピーパー『親子でまなぶ 経済ってなに? 』

ニコウラス・ピーパー『親子でまなぶ 経済ってなに? 』

何!老後には2,000万円必要ですって?うむむ・・・

煽られたわではないのですが、我が子のために、お子様の頃から経済について学んでいた方が良いだろうと、タイトルに惹かれて本書を手にとってみました。

ニコラウス・ピーパー(Nikolaus Piper)『親子でまなぶ 経済ってなに? 』(Geschichte der Wirtschaft)(2003年)は、農業の始まりから近年のグローバリゼーションまで、主として欧米の歴史を辿りながら、”経済活動とは何か”を考察するものです。親子の”子”がどのくらいの年齢かが明確ではありませんが、少なくとも日本の一般的な小学生にはハードルが高いでしょう。西洋史が苦手な自分は、読み進めるにあたって、かなりグーグル先生に頼りました。

なるほど、農耕、分業、交易・・・と、如何にして経済活動が発展していったのか、その理屈が良く分かります。例えば、人々が権力に縛られる理由を、アメリカの経済学者アンカー・オルソンの説を引用し

「ひとつの場所にすみついた泥棒」に支配されるほうが、「いつまた来るかわからない泥棒」にお金やものを奪われるより落ちついて暮らすことができるわけです

と解説しています。実に明快です。日本の歴史を紐解いても、当てはまりますね。現代で普通に使われている言葉(タレントなど)の、その由来を知るのも知的好奇心をくすぐります。

労働、市場、手形、資本、取引所。

西洋の争乱や圧政の中にあっても、民衆の創意工夫から経済活動が広がりをみせます。日本と違って、経済活動には宗教的な価値観が底流にあることを改めて認識しました。停滞をはさみながら、長い時間をかけて経済を取り巻く環境は、変化し続けていきます。

国家の章には、17世紀 ルイ14世の時代における、重商主義政策や保護貿易に関する記載があります。自国優先主義であるがゆえの関税のかけ合いが、世界の経済へどのような弊害をもたらしたのかを振り返っています。現代の米中関係を見ると、ここに舞い戻ったかのようです。

経済の循環、機械制大工業、銀行、労働者、実業家、帝国主義、大恐慌、世界秩序、グローバリゼーションと章は続きます。

本書は、少ないページ数で各テーマの解説がなされているます。より深く知るにはテーマ毎にそれぞれの関連書籍を参照すべきでしょう。自分は、スパルタクス、フッガー家、ポンパドゥール夫人、ロスチャイルド等、人物のキーワードから探ってみようかなと思います。おかげさまで読書の幅が広がりますね。

ただ、親子でまがぶ・・・うちの子供は読まないかなぁ。

以下、小ネタ。

海外旅行の旅行中に、支出は貿易外収支に「輸入」と記入されるそうです。「休養」というサービスを取り入れて(輸入)、元気になって帰国するからだとか。へぇー。