【本の感想】アンティエ・ヴィントガッセン『独裁者の妻たち』

本の感想 アンティエ・ヴィントガッセン『独裁者の妻たち』

独裁者とよばれる人々がいます。

ヒトラー、スターリン、ムッソリーニ、カダフィ大佐 ・・・権力に魅了され、権力を維持する事に血道を上げる人々。善悪の二元論だと、圧倒的な悪のイメージ。彼らの末路が悲惨であるほど、溜飲が下がるという暗い欲求を喚起させます(少なくとも自分にとっては)。

アンティエ・ヴィントガッセン『独裁者の妻たち』は、独裁者の妻、愛人たちにスポットを当てていて、彼女らの生い立ちから、権力を掌握した絶頂のとき、そして終焉までを紹介するものです。独裁者その人については、いろいろな書籍で紹介されているけれど、彼らのパートナーが主役のものはあまりお目にかかったことがありません。歴史において数々の汚点を残した独裁者たちを、別な角度から眺めることができるようになっています。

著者の偏向した意見ともとれる記述があるので、どの程度真実なのかは判然としないところではありますが、読み物としては最高に面白いですね。ユーゴやセルビアといった、触れる機会の少ない国々の情勢をも概観できます。

本書に登場する女性たちは、バイタリティーに溢れています。圧倒的な上昇志向というべきでしょうか。何かをきっかけに変節したのではなくて、生まれついての野心家たちです。国を動かし、人々を支配し、莫大な富を手中に収めます。飽くなき欲求恐るべし。中には独裁者のパートナーだけに留まらず、独裁政治の立役者として独裁者その人をも凌駕しようとします。独裁者自身ですら彼女の力の強大さに恐れを抱くのです。

民族浄化として何百万の人々を虐殺する独裁者たち。そして、それを是認し権力に耽溺する妻たち。どうか不幸がおとずれますように、と願わざるを得ません。まぁ、決して愉快な末路とはならないのだよね。やっぱり。

本書で紹介される独裁者の妻たちは以下のとおりです。

エカテリーナ・スワニーゼ、ナジェージダ・アリルーエワ、ローザ・カガノヴィチ(スターリンの妻たち)/ラケーレ・ムッソリーニ、クララ・ペタッチ(ムッソリーニの妻と愛人)/カルメン・ポロ・デ・フランコ(フランシスコ・フランコ)/江青(毛沢東)/エレナ・チャオシェスク(ニコラエ・チャオシェスク)/エバ・ペロン=エビータ(フアン・ペロン)/マーゴット・ファイスト(エーリッヒ・ホーネッカー)/ヨヴァンカ・ブロズ・チトー(ヨシップ・ブロズ=チトー)/ミリャナ・マルコヴィッチ(スロボダン・ミロシェヴィッチ)

残念ながら有名なエヴァ・ブラウンやイメルダ・マルコスは入っていません。マドンナ主演で映画化されたエビータも、見方を変えればご多分に漏れず独裁者の妻でしょう。

1996年公開 マドンナ主演『エビータ』

1996年公開 マドンナ主演『エビータ』はこちら。当時、マドンナがエビータ役と決まって、アルゼンチンの民衆がぷんすか しましたっけ。