【本の感想】鎌田慧『いじめ自殺―12人の親の証言 』
鎌田慧『いじめ自殺―12人の親の証言 』は、1996年に『せめてあのとき一言でも』として出版され、中高生の自殺が再び問題になったのを契機に、2007年タイトルをかえて文庫化されました。いじめが原因となって自殺を選んだ12人の子。本書は、その父、母へのインタビューを一冊にまとめたものです。
あくまでも彼らの見たまま、感じたままであるので、客観性が担保されているわけではありませんが、思うところは非常に共感ができます。
本書を読んで明らかになるのは、学校や教育委員会の隠蔽体質が今現在と些かも変わっていないということです。日々子供を守ることはルーズであっても、ひとたび、事故が発生したときは、隠蔽に向けての統制力が尋常ではありません。
原則、学校には”いじめは存在しない”のです。
作文等の不都合な文書を焼失させたり、自殺の原因を家庭の問題にすり替えたりと、隠蔽マニュアルの存在を疑ってしまうような行動を取ります。いよいよ自殺の原因がいじめと特定された後も、両親がいじめの実態や遺書の内容を新聞記事で始めて知るといった驚くべきことが起こるのです。もちろん個々には人格的に優れた先生もいるのでしょうが、組織の行動においては人間性が全く感じられません。昨今のいじめ事件そのままです。
12人の親に共通しているのは、子供のサインに気付かなかったという悔悟。そして、本当に何があったかのかを知りたいという気持ちです。
子供たちに手紙を送り、独自に調査をする人がいる。
裁判という公の場で、戦うことを選択する人もいる。
このために、地域社会から爪弾きにされ、被害者が加害者にすり替わってしまう現実があるといいます。
彼らの取った行動やこれからの決断が、全て正解というわけでなないのでしょう。ただ、亡き子供のために何かをしなければならないという思いは、胸が張り裂けそうになるぐらいよく分かります。新たな教訓を見い出せてはいないのですが、感情が昂って、しばしば読み続けることができないくらい悲しくて辛いインタビュー集でした。
本書では、いじめをどうしたらなくせるか という提案がなされています。今の自分に答えがあるわけではないのですが、両手をあげて賛成というわけにはいきません。これは、ずっと考えていかなければいけないテーマのようです。
自分も子供らが小中学校の頃、色々ありました。止まない雨はない、は結果論ですが、良い思い出ではないですね。