【本の感想】飴村行『粘膜人間』

飴村行『粘膜膜人間』

2008年 第15回 日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。

飴村行『粘膜人間』は、何と言ってもタイトルが凄い!秀逸です。

読む前から、想像を逞しくさせてくれます。感覚的には、エロチックさを伴なった、ヒリヒリする痛々しさというところでしょうか。

本作品には、粘膜人間なるものは現われません。執拗に繰り返される残虐描写には、確かに粘膜感覚(?)を刺激されます。粘膜人間とは、あくまで作品世界の象徴的な意味合いなのでしょう。

中学生の兄弟 溝口利一と祐二は、11歳の義理の弟 雷太の殺害を目論んでいました。雷太は、実母が失踪してから、利一と祐二、そして父親までを暴力で支配するようになったのです。しかし、兄弟は、身長195センチ、体重105キロの雷太になす術がありません。そこで、利一は、河童に頼んで、雷太の殺害を成就しようと画策するのでした・・・

本作品の内容をざっくり要約すると、暴力嗜好の小学生と河童たちの血まみれの闘いという、超現実離れしたストーリーです。戦時中の何処かの村という設定が、全編を通してセピア色の印象を与えます。河童との契約条件は、人間の女性と”グッチャネ”、つまり性行為をさせること(”グッチャネ”も粘膜的表現です)。バケモノと不可能な約束をし、望みを叶えてもらおうとするあたりは、本作品のベースが典型的なお伽話だと言えるでしょう。

果たして、兄弟は、契約を全うできるのか。そして、雷太と河童の闘いの行方は・・・

本作品は、肉体破壊の表現などの、グロテスクなシーンが多く見られます。スプラッター過ぎて嫌悪感すら催してしまいます。読者の痛感を刺激する、著者の筆力の高さが良く分かります。しかしながら、タイトルと過激なまでの爆発力だけが際立っているように思えます。スプラッターホラーは大好物だったのですが、最近、どうも苦手になってきました。それだけ自分が歳をとったのでしょうか。

なお、粘膜人間は、シリーズ化されています。次作に手が出るかというと疑問だなぁ・・・