【本の感想】山本博文『切腹~日本人の責任の取り方~』

山本博文『切腹~日本人の責任の取り方~』は、切腹を題材に日本人的な責任論を展開するものです。

主命により死を賜る江戸時代の武士たち。制裁的な措置ならばともかく、理不尽な理由であってもプライドをもって命をなげうつ事例が、多数あげられています。自身の潔白を証明するために腹を切る。悪口言われたんで腹を切る。喧嘩したんで腹を切る。上司に責任をなすりつけられて腹を切る。 ・・・

武士の世界は楽じゃありません。何かあると後難を恐れて親戚一同が、腹を切るよう説得(=詰腹)するなんて、切ないじゃありませんか。431人の生き様・・・ではなく、死に様に目を通しているうち、辟易してしまいました。

武士の命は空気より軽いのです。

印象的だったのは、著者が表現する日本的忠義精神である「君、君たらざれども、臣、臣たり」という言です。本書を読むと、この時代に生まれついていない幸運を喜びたくなります。

日本のトカゲのしっぽ切りは、江戸時代から綿々と続いていたのですよ。現代は、潔よさとか矜持とかはかなり劣化してはいるけれどもね。

乙川優三郎の直木賞受賞作『生きる』は、追腹を切らなかった(殉死の意)武士の不幸を描いた作品で、本書を念頭におくと一層、感慨深いものがあります。

1962年公開 仲代達矢主演『切腹』

1962年公開 仲代達矢主演『切腹』をご参考までに。