【本の感想】岡本真一郎『言語の心理学-伝えたいことは伝わるのか』

岡本真一郎『言語の心理学-伝えたいことは伝わるのか』

ふと、大学生の息子がレポートを書くために購入した本を、読んでみました。

岡本真一郎『言語の心理学-伝えたいことは伝わるのか』は、ことばに関する社会心理学的な観点からの研究を著したものです。

自分の「伝えたいこと」が、「伝わらない」シーンにおいて、「伝わる」というメカニズムを詳説していきます。本書の目的は、終章の「伝えたいことを伝えるには?」にあるのでしょうから、それまでの主張は、この章を論理的に補強するもののはずです。

著者は、コミニュケーションの役割から始め、コミニュケーションのチャネルの特性、コミニュケーションを成り立たせるための共通の基盤の必要性、気を配るということ、そして対人関係の裏側にあるものへ、と論を進めていきます。

「ポライトネス理論」等、様々な学術的な説(そしてその評価)や、フィールドワークの結果を所々で言及しており、当該分野の知識が乏しくとも興味を持って読み進められます。なかでも第4章「自分に気を配る」は、自分のことを伝える上での気配りとして、一読に値します。

ただ、終章の結論は、経験的に当たり前であると捉えることしかできません。

それまでの論とどのように紐付いているかが判然としないため、唐突に主張を繰り広げられているような印象を受けます。感覚的ではありますが、いくつか挙げられている「伝えたいことを伝えるには?」のノウハウで、良好なコミニュケーション、ひいては良好な対人関係を育むことができるか、というと疑問が残ります。

本書の、ネットにおけるコミニュケーションに関する論に違和感があるのですが、どこかに納得性のないものが混じると結論が薄っぺらく感じてしまうのです。これもまた、本書が述べるところの非言語コミニュケーションのなせる技?

自分自身で形づくった経験的なコミニュケーション論は、ある程度の年齢になれば持っているはずです。そこへ論理的な意味付けをするために、本書を活用するのが良いでしょう。「伝え方」のノウハウを学ぶなら、佐々木圭一『伝え方が9割』が明快です。(リンクをクリックいただけると感想のページに移動します

さてさて、息子のレポートを見せてもらいましたが、「目からうろこ」的なことが書かれていてびっくり。息子が素直なのか、自分が捻くれているのか ・・・