【本の感想】貴志祐介『悪の教典』
2010年 週刊文春ミテリーベスト10 国内部門1位。
2010年 第一回 山田風太郎賞受賞作。
2011年 このミステリーがすごい! 国内編1位。
貴志祐介『悪の教典』は、端的にいうと学園バイオレンスものです。
海外でトレーダーとして活躍した経歴をもつ高校の英語教師 蓮見。蓮見は、生徒たちにハスミンと愛称で呼ばれる絶大な人気物で、同僚からも一目置かれていますが、実は、他人には理解不能の利己的な理由により殺人を繰り返すサイコパスだったのです・・・。
蓮見は、邪魔者を一人づつコッソリと排除していくうちに、ちょっとしたミスから、エスカレートし大量殺人せざるを得なくなって・・・、と、物語は展開していきます。
教師が生徒を制裁する作品を挙げると、湊かなえ『告白』、 黒武洋『そして粛清の扉を』 、海外作品でいうとジョー・ゴアズ『野獣の血』ぐらいが思いつきますが(リンクをクリックいただけると感想のページに移動します)、これらはあくまで私憤が動機です。本作品は、動機という点で、他の作品を一線を画します。
自身の欲求を充足させるための、手練手管の末に行われる殺人は惨さ極まれりですが、リアルさが欠如してるせいか抵抗なく読み進められます。蓮見の非道ぷりにムカムカするものの、知力・体力振り絞った生徒たちの反撃に対して、excellent!の感嘆を漏らすシーンは、笑えてしまいます。読み進めていくうちに、サイコパスとしての性質が剥き出しになっていく蓮見のキャラクター設定が秀逸です。
読了した時の後味は、確かに悪いですね。良くも悪くも復讐という欲求が果たされるわけではありませんから。本作品の主人公には、ヒロイズムは皆無です。徹底的な悪がだけが存在する、まさに悪の教えを著したものなのです。
映画では監督が続編を示唆したようですが、原作の方はどうでしょう。あるかもなぁ・・・
本作品が原作の、鳥山英司 画 漫画『悪の教典』はこちら。
本作品が原作の、2012年公開 伊藤英明 主演 映画『悪の教典』はこちら。