【本の感想】ナンシー・エトコフ『なぜ美人ばかりが得をするのか』

本の感想 ナンシー・エトコフ『なぜ美人ばかりが得をするのか』

美人が好きである。

若い頃から表明していることなのですが、こう発言すると周りから冷たい目でみられたりします。こいつカミングアウトしやがった的な。

ナンシー・エトコフ『なぜ美人ばかりが得をするのか』は、ヒトの美しいものへの生得的な嗜好を論考したものです。原題 SURVIVAL OF THE PRETTIEST:The Science of Beauty(美しいものは生き残る:美の科学)の表すとおり、女性の美だけを取り上げているわけではないので邦題は煽りすぎのように思います。

科学的な実験結果のみならず、古今東西の人類学者、文学者、哲学者、芸術家、芸能人、スポーツ選手、モデルらの美に関する発言を引用しながら論を進めていきます。労作であることは確かなのですが、提示される膨大な資料のために著者の主張を見失いかねません。そういう点では多少、読みにくくはありますか。

美しさがかならずしも善ではないとわかっていながら、美しい人はあらゆる面で優遇されています。これは、生物が美しさを健康の証として認識し、子孫を残す可能性が高いと本能的に判断することに起因しているらしい。髪は健康状態を記録しているものだし、ウェストのくびれた女性は妊娠の可能性が高くなると。(ちなみに、健康な女性のヒップに対するウェストの割合は0.67から0.8だそうです)

生後三ヶ月の赤ん坊も、大人が魅力的と考える顔を好ましいと感じるようです。美というものは文化が教えたものではないことになります。なるほど、自分が美人が好きなのは本能のおもむくままなのです。

では、美しい顔とは何であるか。黄金比率は人の顔の全体にあてはまらず、数学を使って計測する方法はまだ確立していません。面白いのは、人の心の中に平均的な顔の像があって、この普遍性が美しさとつながっているという主張です。複数の文化がいりまじると、美の基準は塗りかえられていくのです。美しい顔は民族を超えて共通であると述べています。

動物の世界ではシンメトリーは高度な発達、寄生虫への抵抗力、生存能力をあらわす信号です。著者は、美しい顔の判断の裏には、シンメトリーと平均性、女性の場合は強調された女らしさを探知するメカニズムが働いていると主張します。自然淘汰で人間の脳に用意された回路の働きなのです。

本書では、ファッションや、しぐさ、匂い、フェロモンまで言及します。通底するのは、美しさ対して興味をしめすのは、配偶者としてふさわしいという信号への適応ということです。

ならば、堂々と美人が好きだと主張しよう!

と思ったら

私たちはまた、昔ながらの遺伝子複製ボタンを自動的に押すこととはちがう形で美をとらえられるよう、自分たちの目を教育することもできる。

美は訪れを待つものではない。美は生みだすものだ。

と、最後に著者に釘をさされるわけです。