タイトルで想像がつく通りマーケティングの本です。穴そのものを売ることができるかはさておいて、目を引くタイトルは、まさに本書で主張するところの、顧客の価値への訴求を実践していることになりますか。
【本の感想】佐藤義典『売れる数字 組織を動かすマーケティング』
KGI、KPIといった指標で成果を測るのは、今やどの企業でも一般的です。ただ、KGI、KPIの意味を正しく理解しているかと言う、これを定義している企画部門の方を含めて、どうも怪しい。曖昧なまま末端まで降りてきてしまって、結局、KPIそのものが目的化するのも珍しくありません。
佐藤義典『売れる数字 組織を動かすマーケティング』では、売れない理由を組織のタテ・ヨコで戦略(経営)、戦術(現場)の「一貫性のミス」であると述べています。著者は、この「一貫性のミス」を解決するフレームとして、次の戦略実行の4ステップを提示し、事例をもとに解説をしていきます。
- ステップ1.戦略
- ステップ2.勝利の方程式
- ステップ3.戦略指標
- ステップ4.独自資源
- (最終成果)
戦略実行は、戦略指標で、せ(戦略)・す(数字)・じ(実行)・評価を回し、一貫性を確保するべしと言います。著者の経験に裏打ちされた、実践思考のものであるだけに、納得性が非常に高いですね。分かり易い語り口が、かえって著者の自信をうかがわせます。
戦略立案については、本書では詳細に述べられていませんが、”戦略の実行には行動の制限が必要である”という記述には目からうろこです。曖昧な戦略の上で、「現場はなんでもやるが、結局、成果に結びつかない」、というのはよくあることでしょう。
本書のポイントとしては、「勝利の方程式」と「戦略指標」になります。まず、「勝利の方程式」は、戦略指標の向上が最終成果(例えば、売上向上)をもたらす成功プロセスであるとし、組織全体で追いかければ、戦略が自律的に実行される数字を「戦略指標」と定義しています。数値化できない戦略の成果は存在しないと断言する著者には痛快さすら感じてしまいます。「戦略指標」を人事評価に組み込んで一貫性を取るという提言には、またまた首肯せざるを得ません。
短時間で読了できる、戦略実行のエッセンスが詰まった良書です。所謂、KGI、KPIが実感できない方は、本書で理解が進むことでしょう(はっきりと明示されてはいませんが、意味は一緒です)。
本書の「プロ野球選手の戦略指標を考察する」は、ものごとの多面的な考え方の重要性を示唆する楽しいコラムでした。
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