【本の感想】ルース・レンデル『ロウフィールド館の惨劇』

1984年 週刊文春ミステリーベスト10 海外部門7位。

ユーニス・バーチマンがカヴァデイル一家を殺したのは、読み書きができなかったためである。

本の感想 ルース・レンデル『ロウフィールド館の惨劇』

ルース・レンデル(Ruth Rendell)『ロウフィールド館の惨劇』(A Judgement In Stone)は、この衝撃的な一文から幕を開けます。ここから陰惨な事件が、時を遡ってつづられるのです。

ストーリーはごくシンプル。カヴァデイル家の家政婦ユーニスが雇われてから、雇い主への凶行に及ぶまでの一年間を追っていきます。ひとは、強いコンプレックスに苛まれたとき、一見ささいな事をトリガーとして、行動を抑制できなくなるのかもしれません。極端ではあるけれども、そんな、誰にでもある心の闇の部分を見せつけられた気がします。

ユーニスとともに、事件の中心人物となるジョーン。二人が出会ったとき、カヴァデイル家の末路は決定づけられます。お互いを蔑みながら、寄りかかろうとする二人の奇妙な友情が、ストーリに厚味を与えているようです。

本作品の登場人物らは、スノビッシュなアッパーミドルクラスの人々。典型的な英国支配階級としての彼らが、ボタンの掛け違いから、運命に絡めとられていく様が、じっくり描かれています。それぞれが、それぞれの勝手な理屈で行動し、ユーニスによって、最終的に死という点に収斂されていきます。

冒頭の一文で結末が明らかなのですが、それでも読者にページを繰る手を休ませません。カウントダウンをするかのような、レンデルの読ませるテクニックはすばらしいですね。

1995年公開 映画『沈黙の女 ローフィールド館の惨劇』

1995年公開 映画『沈黙の女 ロウフィールド館の惨劇』はこちら。