殺し屋専用のダイナーで繰り広げられる奇妙奇天烈な物語です。美麗な料理と過激な暴力が渾然一体となり悪党どもの宴が催されます。異形異才の殺し屋たちのキレっぷりが楽しいですね。まるでマカロニウエスタンのよう…
【本の感想】平山夢明『デブを捨てに』
自分は、小学生の頃、いい具合の肥満児でした。クラスメートからは、何かのきっかけでデブを連呼されたり、おっぱいを揉まれたり、随分、弄られました。辛かった・・・。黒歴史でございます。
中学に入ったら縦に伸びて、どちらかというと痩せている方にポジションをシフトしたのですが、太る、肥る、デブるのワードにすっかり神経質になっていました。何故か餅を食べる=デブると思い込んで、それから今に至るまで餅を殆ど食べていません。(それでも中年に成り立ての頃は、思いっ切りおデブだったんですがね)
平山夢明『デブを捨てに 』。タイトルを目にするだけで、また育ち始めた腹周りの脂肪を揺すられるアンニュイな気分を味わいます。何々、デブを捨てられる魔法の話かい? そう言えば、おっさんになって肥大化した折には、運動会の時の背中に入れたタオルの如く、脂肪をずるりと一気に抜き取る夢想をしたものです。
ところが、本作品は、想像したものとは違います。借金の肩代わりに貸主の超絶肥満な娘を捨てに行くという、奇妙なロードノベルなのです。あれれ、そのまんまですね。収録されている他の作品も同様で、痛くて、気色の悪い、いわゆるグロテスクな作品集となっています。
えせ大麻を売りさばく少年「いんちき小僧」、テレビの大家族ものを揶揄した「マミーボコボコ」、容貌に難ありな風俗嬢と元殺人犯の男「顔が不自由で素敵な売女」とタイトルのインパクトは絶大です。もちろん内容もね。
著者の作品は、ルックスや金銭的な問題を抱えた人々が多く登場し、彼らに対するどSな差別表現で、読者は、不快ギリギリの所まで連れて行かれます。まったく、口が悪いわぁ・・・。しかしながら、本作品集は、グロテスクだけに終わってはいません。無理やり感はあるものの、ラストは些かにほっこりするからでしょう。著者の『独白するユニバーサル横メルカトル』よりは、ずっと取っ付きやすい作品集だと思います。
さて、自分はこの頃、じじいにさらに近づいて体を動かすのが面倒になりました。こうすると、幼い頃蓄わえた脂肪細胞の成せる業か肥大化が始まるんだよなぁ・・・
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