【本の感想】エド・キャットムル、エイミー・ワラス 『ピクサー流 創造するちから』

エド・キャットムル、エイミー・ワラス 『ピクサー流 創造するちから』

会社の有志を集って月1回、勉強会を行なっています。普段読まない(読まないであろう)ビジネス書を取り上げて、意見交換をし、アウトプットする。いわゆるアウトプット勉強会です。

エド・キャットムル(Ed Catmull)、エイミー・ワラス(Amy Wallace)『ピクサー流 創造するちから』(Creativity, Inc.)は、勉強会メンバーの中では評判が良かった本です。お値段の割にボリュームがあって、期限内に読み切れなかったメンバーもいたのですが。

本書は、ピクサーの創業者による経営哲学本です。

ピクサー黎明期から、「トイ・ストーリー」を始めとした大ヒット作品を量産する昨今までの経営奮闘記であり、マネジメントとしての試行錯誤の歴史でもあります。

ピクサーの名前は聞いたことがあっても、どういう成り立ちの企業で、ウォルト・ディズニーとはどんな関係なのか、を理解している方はあまりいないのかもしれませんね。大方は、コンテンツが良ければ、その制作会社のあれやこれやといった内情はどうでも良いと考えるでしょう。

では、良質なコンテンツとはどのように制作されているのか。本書を読むと、より一層、コンテンツの価値を分からせてくれます。やはり、人を感動させるのは、ユーザの見えないところにドラマがあってこそなのです。

読み進めると、いち科学者である著者が立ち上げた小さな会社が、ジョージ・ルーカスやスティーブ・ジョブズとの出会いを経て、すったもんだの挙句ウォルト・ディズニーの傘下へという、ベンチャー企業の浮き沈みを直視することになります。そういう波乱万丈な職場環境下で、マネジメント層が社員のモチベーションを如何に高めていったかがドキュメンタリータッチで述べられていきます。技術者は、技術で人を鼓舞していくべきなんですね。”創造するちから”は、モチベーションに裏打ちされているのが良く分かります。希代の偏屈者スティーブ・ジョブズとの関係は胸熱です(それにひきかえルーカスってどうよ?)。

本書の終わりにまとめられている金言の数々は目から鱗で、ここだけでも一読の価値はあります。特に悩める管理職にはオススメです。以下に、自分に気づきを与えてくれたものを抜き出してみましょう。

よいアイデアを凡庸なチームに与えればそのアイデアを台無しにし、凡庸なアイデアを優秀なチームに与えれば、それをテコ入れするかもっといいアイデアを返してくれる。よいチームをつくればよいアイデアに恵まれる。

ミスを防げば、ミスに対処する必要がなくなるという幻想に陥ってはならない。実際には、ミスを防ぐためのコストのほうが、ミスに対処するコストよりはるかに高くつく場合が多い。

信頼とは、相手が失敗しないことを信じるのではなく、相手が失敗しても信じることである。

並外れて困難な問題に取り組むことで、新しい考え方が生まれる。

「すばらしいアイデアが生まれるためには、すばらしくない段階が必要」なことを理解しない人から新しいアイデアを守ることが、創造的な環境におけるマネージャの仕事である。過去ではなく、未来を守ること。

あぁ、素晴らしい!